今週のごあいさつ

盛りすぎ注意

 2月にすごくあったかい日があって、このまま冬が終わっていくのかと思ったら、思いのほか寒い日が続いたので余計に春が待ち遠しいです。

 今週から気温も上がっていくようなので、「暑さ寒さも彼岸まで」の通りになりそうですね。

 お寺で、よくお参りの方々とお唱えする「十善戒」という、良い生き方をするための10の教えがあります。

その10の教えのうち4つが言葉に関する戒めで、嘘をつかない「不妄語」。飾り立てた言葉を使わない「不綺語」。悪口を言わない「不悪口」。二枚舌を使わない「不両舌」がそれになります。

この中で、嘘、悪口、二枚舌は直接的なトラブルになりやすく、気を付けるよう注意を受けることも多いです。

ただ飾り立てた言葉を使わない「不綺語」に関しては、あまり注意を受けることは少ないように思います。

でもわざわざ飾り立てた言葉を禁止するにはそれなりの理由があるのだと思います。

「不綺語」を念頭に置いて世の中を見てみると、実は世間は綺語だらけだったりします。

飾り立てた言葉というと実感がわきにくいかもしれませんが、最近の言葉でいうと「盛る」というやつですね。必要以上に盛られた言葉があふれているような気がします。

ご飯を紹介するようなテレビ番組では、ただ「おいしい」と言うのでは足らないようで、あれこれ盛った表現をしたり、別の何かに例えたりしながら味を表現しています。

あと、ほめる言葉が行き過ぎているように感じます。

いろんな言葉を盛りに盛って、よかったとか感動したといったことを伝えようとして、これまた必要以上の表現を盛っていく。

思うにそうした言葉を伝えることで相手に喜んでもらおうとか、心に残る言葉を言おうとしているのかなと思うのですが、それが行き過ぎてしまうと、際限なく言葉を盛っていかなければならなくなるし、何よりそこまで盛った言葉は自分本来の気持ちとはかけ離れたものになってしまいます。

仏教ではありのままに物事を見ることが大事だとされていますが、ありのまま以上を表現しようとする綺語は、やはり避けねばならないということで、不綺語という戒ができたのかもしれません。

わざわざ戒律として言わなければいけなかったということは、人間は言葉を盛っちゃう癖があるということですね。確かにありのままを伝えようとすると、どうしたって当たり障りのないつまらない言葉になってしまいます。そうすると過剰な表現をしたくなっちゃいますよね。

だけどそれが本心であるかどうかは、言葉にする前にちょっと自分で精査したほうがいいのかもしれません。

言いたい放題はやっぱりちょっと無責任さが出ちゃいますもんね。

今週も最後まで読んでいただきありがとうございました。         合掌