今週のごあいさつ
毒を持っている動物
3月に入って春らしい穏やかな気候になってきましたね。寒さも和らいできて、もうそれだけで気力の湧き方が違うように思えます。やっぱり気温・気候からの影響って大きいですね。
さて、毒を持っている生き物っていますよね。蛇とか蜘蛛とか、あとフグなんかも体内に毒を持っていて、うかつに触れられませんよね。
ちょっと調べてみると、体内で毒は作るけれど、その毒は自分を害さないように体内では守られていて、外敵から身を守る時に体外に出されると毒として作用するのだそうです。
確かに自分の毒で自分がやられちゃったら意味がないですもんね。だけど体の中に毒があるってどんな感覚なんだろう、というのはちょっと気になります。
ところで、仏教にも毒という言葉を使うことがあって、その代表が「三毒(さんどく)」という言葉です。
貧(とん) むさぼる心 強い欲求
瞋(じん) 身を焦がすような怒りの心
痴(ち) 愚かなこと 自分の考えが正しいと思い込むこと
この三つが人間の根本にある煩悩として、人を苦しめるのだという教えです。
仏教の本なんかを読むと三毒の教えは必ずと言っていいほど書かれていることなので、仏教の中でも特に大事な教えなんだと思います。
ただあまりに有名すぎて(仏教の中では)、「なるほど、そうなのか」となんとなく意味だけ覚えて納得していたのですが、よくよく考えてみたら、人間もあらかじめ毒を持っているっていうことですよね。
もちろん「毒」といっても比喩的なものなので、実際に貧の成分が血中にどれだけ入っていて、瞋の成分が一定量を超えると致死量になる。なんていうことはないです。
だけど欲が絡んで事件になるとか、怒りに任せて人を傷つける、なんていうこともあるわけで、本物の毒のように人に害を与えるものでもあるわけです。
そして何より、毒を持っている動物は、その毒で自分を害することはありませんが、三毒は誰よりも自分を苦しめる毒となります。
その毒が強くまわればまわるほど、その人の持っている良さが失われてしまいます。言ってみれば、人格を壊してしまう。それくらい強烈な毒が、人間には備わっている。そういうことを仏教で言っているのだと思います。
コロナウイルスが大流行して、外から体に入ってくる病気にばかり目が行くようになっていますが、実は自分の中にも毒があって、その毒によって自分自身を苦しめることがあるんだよ。ということはちょっと覚えておいた方がいいように思います。
誰かのせいにしがちだけれど、実は自分の持っている毒が暴れているからなんだ、と。
思いかえすまでもなく、私の中にもしっかり毒があるのを感じています。
毒の取り扱い、上手になりたいものですね。
今週も最後まで読んでいただきありがとうございました
合掌