今週のごあいさつ

楽しそうでいいね!

 司馬遼太郎さんの書いた『竜馬がゆく』の中で、主人公の坂本龍馬が同郷の浪人の不幸な身の上話を聞いて、助けてやろうとお金を渡したところ、実はその身の上話はウソで、お金をだまし取られてしまったのですが、それを知らされた坂本龍馬は怒るどころか、「あいつは今その金で楽しく遊んでるんだろうな」と想像して、愉快な気持ちになっていた。という

場面がありました。

 もちろん小説の中のお話しなので実際にあったことではないのでしょうが、これを読んだときに、これくらい寛容であれたらいいなと憧れたものでした。

 まあ実際に自分がオレオレ詐欺みたいな詐欺被害に遭ったら、だまし取られたお金で楽しく遊んでるんだろうな、なんて呑気な想像はしないでしょうし、そういう犯罪をする人たちは軒並み捕まってほしいとは思っていますが、ただ他人が楽しんでいるのを素直に「いいなぁ」と言える人にはなりたいと、初めて『竜馬がゆく』を読んだ高校生くらいから思っていて、ちょっとずつそう言える訓練を積んできたつもりです。

 それでもついつい人と比べては、うらやましさや妬ましさ、それを素直に認められない強がり、気になるけど見てみないふりなどの気持ちがわいてくることはあります。

 だけど、ちょっとだけ想像力を働かせて、「あぁ、楽しいだろうな」と思えたときは、妬みや羨望に心が奪われている時よりもずっと気持ちが楽ですし、ここ最近はわりとすんなりそういう気持ちになれているような気がします。

 あと、自分自身の経験から、どれだけ楽しそうに見えても、どれだけうらやましいと思われるような境遇にいても、目には見えない大変なこともあるんだろうな、ということも想像するようにしています。そして、そういう大変なことの上に今の楽しそうなことがあるんだろうな、という風に物事を見るようにしています。

 最近だとSNSなどで人が楽しそうにしているところなどは嫌でも目にしやすい状況にあります。

 そしてそればっかり目にしていると、今の自分の状況を情けなく思えて来たり、負けたと思ったり、思う必要のないことを思って悩んでしまうということもあるんだと思います。

 自分と人を比べてしまうとそんな気持ちになってしまいますが、比べる前に「楽しそうでいいね!」と思っておけば気持ちはずいぶん楽になりますし、自分の寛容さも育てられるのではないでしょうか。

 寛容さって自分を守るためにも必要ですよね。

 今週も最後まで読んでいただきありがとうございました。       合掌