今週のごあいさつ

時間感覚の境目

 花が盛りの時期を迎え、お寺の境内も桜をはじめとする色々な花が満開になっています。寒い日もありましたが、これからは暖かいと思う日が多くなりそうですね。

 学校が春休みに入り、うちの子どもたちは妻の実家に遊びに行っています。妻の実家に家族を送っていくと、いとこのお兄ちゃんも同様に春休みで、遊びに来ていました。

 久しぶりに会う甥っ子は、この春から6年生になるようで、つくづく人の家の子は成長が早いなと感じてしまいます。

 背が高いのでぐっと大人びて見える甥っ子は、思春期に入り始めたのか、以前に比べて屈託も出てきているようでした。うちの子は、上の子が春から4年生で、まだ無邪気でいてくれますが、これももう少しすると家族の前では口数も減ってくるのかな、と色々と考えてしまいます。

 そんな中、甥っ子とお話している時に、そういえばと思って、「もうすぐ6年生になるんだったら、最近急に時間がたつのが早くなってきていない?」と聞いてみました。

 私自身、小学校5年生の終わりくらいに、それまでとは時間の経ち方が変わってきたのを感じ、友達に聞いてみたところ、みんなも同じように時間がたつのが早くなったと感じたようでした。

 それまでは大人が「1年たつのは早いな」と言っているのを聞いても、いまいちピンと来ていなかったのですが、6年生間近になって「ああ、このことを言っていたのか」と実感したのを今でも覚えています。大人になれたようでうれしく思う半面、時が早く過ぎてしまうことをもったいないように思った記憶があります。

案の定、甥っ子も「最近時間がたつのが早くなった」と言っていたので、やっぱり時間の感覚が変わってくるのがそのくらいの時期になるのでしょうね。

 

 なぜ時間が経つのが年々早く感じるようになるのか、諸説あるようです。経験が積まれてきたからだとか、記憶できる量に関係しているとか、心拍数など肉体的な理由だとか。

 ただ理由はどうあれ、寿命が100歳にまでなろうとしている現代で、ずっと子どもと同じような時間感覚だと、いささか長すぎるんじゃないかと思います。例えば今60才でも、残りあと40年ってけっこう長いですよね。それなら1年1年を短く感じるくらいがちょうどいいんじゃないかとも思います。

 そして、もし時間が早く過ぎると感じてしまうのを、もったいないと思うなら、今この時をちゃんと大事に過ごすことが大切なのだと思います。

 人は経験を積んで、色んなことを記憶していく中で、過去を「あの頃はよかった」と美化して、未来に対しては「もっとこんな風によくなるはずだ」と期待する傾向にあるようです。そして美化も期待もちょっと多く見積もるようです。

 だけど実際は過去も未来もこの「今」が連続しているものなので、どちらも過剰に今現在より良いものではないと思います。

 だから、もし過去と未来を実際よりも良いものとして見て、結果的に今現在をつまらないものとか、良くないものとおもってしまうのは、ちょっと残念な気がします。

 それなら、もっと今を楽しめるように工夫する方が、よりよい生き方につながると思います。

 

 春になり、これから新しい生活が始まる人も多いでしょうが、今後「最初の頃の方が一番ヤル気があって幸せだった」と思わないよう、簡単なことからでいいので、今を楽しむ工夫をしてみてはいかがでしょうか。

 今週も最後まで読んでいただきありがとうございました。         合掌