今週のごあいさつ

何事も予防が大事

昨年の暮れから始めていた本堂の荘厳具の修理・洗浄の作業が終わりました。本堂内陣に吊っている天蓋と幢幡(どうばん)の瓔珞(ようらく)という飾り付けがあるのですが、中にタコ糸が入っていて、それが経年により切れやすくなっているのでステンレス製の糸と交換をするため、お正月前から修理に出していました。

 お正月・節分とお参りの多い時期に瓔珞を外したままになるので、お参りの方に違和感を持たれるかなと思っていたのですが、まったく指摘されませんでした。

 それどころかいつもお手伝いに来てもらうほかのお寺のお坊さんたちも、こちらから言わないと気が付かず、毎日見ていないと案外わからないものなんだなと思いました。

 3月27日から29日の3日間で、修理した瓔珞の取り付けと、天蓋、大壇、幢幡、厨子などの洗浄作業を行い、まるで新品のような輝きを取り戻しました。

 その時の様子を一部、お寺のインスタグラムで紹介しているので、気になる方は見てみてください。

 長年にわたるお香の煙や、そこに付着するほこりや汚れによって金箔や漆がくすんだ色になっていました。

 それはそれで、しっかりおがんでいる証のような気もするので、そのままでもいいのかなと思ったりもしていましたが、この度見違えるように奇麗になって、やっぱりやってよかったと満足しております。4月の朔日祭や春の大祭のときなどに、一度よく見てみてください。ほんとに全然違います。

 また、きれいになっただけでなく、こうして汚れを落としておくことで、物の持ちがよくなるとも言われました。作業をしてくれた職人さんいわく、これ以上放っておくと、いずれ金箔や漆が剥落していき、そうなると洗浄や磨きではなく、箔や漆の貼り直し、塗り直し。また傷み具合によっては修理をする必要があり、その場合は手間も費用も洗浄の比ではないとのことでした。

 何より昔のものは質の良いものを使っているのに比べ、現在は良い材料が手に入りにくくなっているので、もし新調するようなことになれば、高いお金を出して、今までより質の悪いものを買うことになるのだそうです。

 そして職人さんも高齢化や後継者不足で減っているようで、修理をしてほしくてもできる人がいない、という状況になってきているのだと言います。

 今回の瓔珞修理や仏具の洗浄は、大きく劣化する前に行えたのでタイミングが良かったとのこと。「これであと50年は保ちます。」と言ってもらえました。

 昨年までの境内改修工事で、お寺も随分新しくなりましたが、今回の修復作業を経て、新しくすることも大切だけれど、古いものを大切に残して、次につなげることも大切だと感じました。

 そうしたことを丁寧に行っていくことで、皆様が心のよりどころとなる場を保つことが出来るのだと、思っております。

 人の体の場合、「予防は治療より、よほど効果的だ」と言われますが、何事も維持管理、メンテナンスは怠らないことが大切ですね。

 きれいになった内陣。ぜひお参りの際にご覧になってください。

                                    合掌