今週のごあいさつ

サンタクロースの化身

12月も後半に入り日ごとに年末感が増してきます。先日はどかっと雪が降って「ああ、冬だなぁ」と嫌でも実感させられました。

さて、12月後半の最大イベントはというと、やっぱりクリスマスですよね。「お寺にクリスマスは関係あるの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、全く関係ありません。宗旨が違いますからね。でも先日すごくいいお話を聞いたのでご紹介します。

私の趣味(?)の一つに、少し大きくなった、小学校中・高学年くらいのお子さんがいるお父さんお母さんに「お子さんはサンタさん信じていますか?」と聞くという趣味があります。

なんでこんなことを聞くかというと、知り合いに中学校3年生までサンタクロースの存在を信じていた人がいて、そのあまりの純真さに不安を覚えたご両親が、中3の娘に深刻な面持ちで「実はな、サンタさんはいないんだ。プレゼントはお父さんとお母さんが買ってたんだ…」と告白をして、その方は大いにショックを受けたのだそうです。その話を聞いて以来、他の家庭はその辺のサンタ事情をどうしているのかが気になってそういう質問をするようになりました。

それで先日もお子さんのいらっしゃるお母さんに同じ質問をしたところ、とても素敵な答えが返ってきました。

どういう答えかというと「上のお姉ちゃんはもう大きいから多分信じてはいないと思うけれど、ただ私は自分をサンタの化身だと思ってプレゼントを用意している。」とそのお母さんはおっしゃったのです。

これ、すごくいい考え方ですよね。サンタクロースが本当にいようといまいと、クリスマスの朝に子どもたちの枕元にはプレゼントが置かれているのです。そしてそれを見つけた子どもたちはとても嬉しそうな顔をしてワクワクしながらプレゼントの包みを開けるのです。

なぜそのように親がプレゼントを用意するかというと、プレゼントを用意するという行為と、それを見つけて子どもが喜ぶという結果の間に「サンタクロース」というエピソードがあるからです。

そのサンタクロースというエピソードにのっとって親はプレゼントを用意するのであれば、その親はサンタクロースの化身なんだというわけです。だから言ってしまえばサンタはいるんだということですよね。別に白い立派なヒゲを生やし、真っ赤な服を着ていなくても、「サンタクロース」というお話があるからこそ、子どもたちはプレゼントをもらえるわけですから。

いや、ほんとにいい考え方ですよね。

さて、このお話をちょっと無理矢理仏教のお話にしようとおもうのですが、神や仏は本当にいるのか、という疑問を持つ方がいらっしゃいます。神・仏というものがこの宇宙のどこかに確かに存在していて、修行を積むなどの手段を用いるといつかは目に見えたり手に触れられたりするのか、と。

そういった思いにこの「サンタクロース化身理論」を当てはめてみたいのですが、「仏」や「神」に対して私たちが抱くイメージというのは「悟り」であったり「一切の苦しみから離れる」であったり、あるいは「救い」や「超越」、「永遠」「無限」といった思いではないでしょうか。そういった思いの象徴であり化身であるのがいわゆる神・仏といった存在になるのかと思います。

そしてですね、その神・仏を想って信仰をしたり、そこを目指して修行をすることによって善良な行いや清浄な心を獲得していく。そうなっていくと私たち自身が「仏の化身」となっていくのではないかと思うのです。

仏教の目指すところは「仏になる」ということです。その仏がいるとかいないとかではなく、我々自身がその仏を目指す行為によって、仏の化身となる。仏を象徴する思いの化身となれるのであれば、それはすなわち仏である。だから仏はいるんだと言ってもいいのかなと思っています。

やや強引でしょうか?けれど、自分が仏の化身となれると思えれば、良い生き方をする勇気が出ますよね。

ともあれ、24日の夜には全国各地でサンタクロースの化身があらわれることでしょう。本当にいるとかいないとかは別にして、そういうのは楽しくていいことですよね。

今週も最後まで読んでいただきありがとうございました。

合掌